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『NEWSを疑え!』第278号(2014年2月20日号)

『NEWSを疑え!』第276号(2014年2月13日号)
【今回の目次】
◎ストラテジック・アイ(Strategic Eye)
◇◆静岡県の危機管理から見えたもの
◆非常用発電機を使えない?
◆訓練できない新東名のヘリポート
◆抜き打ち訓練でわかった基本的欠陥
◎セキュリティ・アイ(Security Eye)
・議論を呼ぶ米軍装甲車の警察配備
(静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之)
◎ミリタリー・アイ(Military Eye)
・内部告発が支える米軍の自浄能力(西恭之)
◎編集後記
・孫文の「抜け穴」

◇◆静岡県の危機管理から見えたもの

国際変動研究所理事長 軍事アナリスト 小川和久

Q:小川さんは静岡県の危機管理に関する仕事をされていますね。これまでどんなことを実現されたのか、教えてください。

小川:「2012年6月、私は静岡県立大学の特任教授になりました。友人の川勝平太静岡県知事から『静岡の危機管理を全面的に見直し、レベルを向上させたい。協力してくれないか』と求められたのがきっかけです。東日本大震災が起こった2011年の11月のことで、川勝さんは3.11直後に私が朝日新聞『論点』に書いた危機管理の基本は『拙速』にあるという主張を読み、声をかけてくれました。同じ趣旨の記事がネットで読めますから紹介しておきます」

●危機管理の基本は「拙速」
(『経済広報』2012年3月号)
http://www.kkc.or.jp/plaza/magazine/201203_02.html?cid=8

「川勝さんは当初、私を危機管理担当の副知事にしたかったようでした。しかし、副知事では会議や行事に出なければならないといった制約がありますし、専門性を発揮しにくくなってしまいます。ミニ・シンクタンク国際変動研究所を維持・運営していくことにも支障が出ます。そこで、川勝さんは私が自由に動けるように静岡県立大学グローバル地域センター特任教授のポストを用意してくれました」

「大学の辞令が出る前の2012年4月から5月にかけて、私は東日本大震災に関する聞き取り調査をやりました。対象は、まず静岡県庁の危機管理部の幹部。次に宮城県・仙台市・岩手県で実際に組織を動かし、3.11に対応した防災危機管理監(陸上自衛隊出身の一佐か将補クラス)。さらに、3.11後いち早く地域防災計画の見直しに着手した和歌山県、3.11に関する宮城県調査報告書の作成を委託された兵庫県『人と防災未来センター』、宮城県庁に置かれた政府緊急災害現地対策本部の事実上の責任者だった消防庁の長谷川彰一・次長(当時は内閣審議官)からもヒアリングを重ねました」

「こうした聞き取り調査に基づいて、私は行政の3.11対応にどんな問題点があったか分析し、静岡県ではこんな取り組みが必要だという予備調査報告書をまとめて、2012年6月14日に川勝知事に提出しました。報告書には短期、中期、中・長期の計画と工程表もつけ、これをもとに動きはじめたのです」

Q:事前のヒアリングで浮き彫りになった問題点とは?

小川:「一言でいえば、県や市町村といった行政の仕組み・文化が危機管理にまったく向いていないことが、明らかになりました。当メルマガでも何度か触れましたが、行政の仕組みや文化はあくまで平時のもので、危機管理と謳っていても形式的にすぎ、有事には役に立ちません。ある県の報告書は、3.11の対応を『80点の出来』と振り返りましたが、実際に担当した自衛隊の制服組OBに言わせると『せいぜい30点』でした。予備調査報告書は部外秘とし、こうした証言を生の表現で盛り込みました」

「とりわけ痛感したのは、県や市町村などの行政組織には、自衛隊は消防とも警察とも異なる組織だという認識がまったくないことです。行政と自衛隊の違いはもちろん、自衛隊と消防・警察との違いもわかっておらず、比べてみようとすらしなかったのです。自衛隊は、電気も水道もない戦場で活動するのが当然の軍事組織ですから、電話がなくても通信できるし、周囲の様子がわからなければ偵察隊を出す。ところが、行政組織は電話がなければ通信できず、市町村と連絡が取れなければ『情報がない』というところでストップしてしまう」

「もちろん自衛隊も、自分たちと市町村などの行政組織、あるいは消防・警察との違いをよくわかっていないかもしれません。それでも自衛隊は自分で動けますから問題は生じません。しかし、行政組織が止まってしまえば住民が困ります。静岡県は2012年までの過去31年間に東海地震対策だけで2兆円以上を投じてきた『防災先進県』ですが、やはりそんな穴があります。それを急いで埋めなければ県民の命を守れない、というのが私の問題意識でした」